クラヴィアソナタの部屋第1室

BGM/Haydn Clavier Sonata No.14(16) D-dur 1st mov.

△第16番(番外)変ホ長調通し番号−1

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Andande
[Presto]
Es バロックソナタ
2 3/4 Menuet Es メヌエット
3 3/4 Presto Es 小ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1? 1楽章のテンポの変化は、表記が無いが、記入漏れと判断出来る
注釈

この作品は、ウィーン原典版では偽作と判断しています。1楽章が変わっていて、アンダンテで始まり、フェルマータとカデンツァを経て、早い部分(テンポの指示は欠落していますが)があり、その2つの部分が、第1主題部と第2主題部の関係になっています。当時、カデンツァは、演奏者の判断で挿入される事はありましたが、実際に記譜されている例はめったに無く、ハイドンの初期作品に登場するとは、にわかには信じにくいと考えます。その他にも、旋律そのものの個性とか、装飾音の使い方や、曲の展開の方法などで、他のハイドンの作品とは明らかに異なるように感じられる部分が多々あります。しかし、新全集版では、真偽に疑問があるとしながらも、ハイドンの個性が確立する以前の最初期の作品である、という判断で、1曲目に掲載しています。私の意見としましては、やはり偽作と判断する方が良いかと思いますが、当然ながら、結論をはっきりと下すには資料が不足していると言わざるを得ません。


△第5番(第8番)イ長調通し番号−2

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro バロックソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 3/8 Presto 中ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1763 2? かなり規模が大きい作品
注釈

この作品も偽作説があります。新全集版もウィーン原典版も真偽に疑問があることを序文などではっきりと明示しています。曲の特徴をいくつかあげてみますと、目に付くのは、いろいろなフレーズが次々に出て来るタイプの曲であることと、第2主題が短調であること、曲の展開がぎこちないことです。フレーズが次々と出て来るのは、インスピレーションに富んでいるようにも見える部分があり、展開に困って関係の無いものをくっつけてしまったように見える部分もあります。その、インスピレーションに富んでいるように見える部分が、いかにもハイドン的にも感じられるので、真偽を判断するのに迷います。この曲の場合も、はっきりとした資料が見つからない限り、断を下すことは出来ないのでしょう。私の個人的な判断では、偽作と考えたいと感じています。ただし、偽作とした場合、その真の作者はかなり実力を備えています。


△第12番(第12番)イ長調通し番号−3

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Andante 小ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 3/8 Finale 小ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1767 2楽章がとても面白い
注釈

この作品は、偽作ということではないのですが、1楽章の1部に他人の手が入っているのではないかと疑われています。このことは、新全集版もウィーン原典版も序文に明記してあります。初めて出版されている年代は当時の出版社のカタログによって確認出来るのですが、どうも正規の出版では無いようで、原本の一部に不備があって、誰かがその部分を書き足したということがあった可能性は否定できません。実際1楽章の展開部が、かなりの小説数がありながら、全く原調のまま一度も転調が無く、いたずらにフレーズを反復進行で繰り返しているのは、創造力の貧困さを感じさせ、ハイドン以外の人物の手によるとする説に、十分な説得力を与えています。しかし、若い未熟な時期の作品という解釈も成り立ちますので、やはり断定は出来ません。


○第13番(第15番)ホ長調通し番号−4

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Moderato 単一主題の小ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 2/4 Presto 小ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1757 3楽章では、主題を提示後すぐに短調で繰り返している。

◎第14番(第16番)ニ長調通し番号−5

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro moderato 中ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
トリオは調号無し
3 2/4 Presto 単一主題の中ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1767 かなり規模が大きい作品。内容も充実している。1楽章の第2主題に移行する展開は出色。

◎第6番(第13番)ト長調通し番号−6

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Allegro バロックソナタ
2 3/4 Minuet メヌエット
3 4/4 Adagio バロックソナタ
3 3/8 Allegro molto 小ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1766 テクニカルで華やかな部分も、しっとりと歌う部分もあり、なかなか聞き応えがある作品。4楽章形式は珍しい。

○第2番(第11番)変ロ長調通し番号−7

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Moderato 中ソナタ
2 3/4 Largo バロックソナタ
3 3/4 Menuet メヌエット
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
初期ではかなり長大な作品。内容は深いが、少々間延びする感覚もある。
注釈

1楽章のモデラートの指示は若干疑問で、原本の記載ミスの可能性があります。


●番外(第17番)変ホ長調通し番号−8

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato Es バロックソナタ
2 2/4 Andante バロックソナタ
3 3/4 Menuetto Es メヌエット
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
メロディ自体がバロック的。
注釈

この作品は旧全集版が出版された後、1961年になってから、チェコのライゲルン修道院で発見された、未知の2曲の作品の内の1曲で、ライゲルン・ソナタ第1番とも呼ばれています。発見された時の状況は、既知の3曲と合わせて5曲分の筆写譜が一まとめになっていましたので、未知の2曲もハイドンの作であろうと判断されたものです。しかし、第2番の方には偽作と考えられる証拠が見つかっていて、この第1番も本当に真作なのかどうかは疑問と考えざるを得ません。曲調的にはかなりバロック色が濃く、もしも真作ならば、最初期の作品と考えるべきでしょう。私の見るところ、第2番と書法的な共通性が見られ、同じ人物の同じ時期の作品である可能性を感じます。そうなりますと、第2番が偽作ならば、こちらも偽作ということになってしまいますが、部分的にその人物の手が入っている可能性も考慮しなければなりませんので、まだまだ結論には遠そうです。


△番外(第18番)変ホ長調通し番号−9

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 (Allegro moderato) Es 中ソナタ
2 3/4 Menuetto Es es メヌエット
3 2/4 Allegro assai Es 中ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
変化に富み、かなり楽しめる作品
注釈

こちらが「ライゲルン・ソナタ第2番」になります。発見された状況は前記の通りですが、その時は2楽章までしかありませんでした。その後1972年にブダペストで、この作品の筆写譜がもう一組発見され、そちらは3楽章まで書かれていました。さらに重要な点は、作曲者としてマリアノ・ロマーノ・カイザーの名が記されていた事です。これは、ハイドン作ではない決定的な証拠と考えても良いかも知れません。さて、この第二の発見は、新全集版もウィーン原典版も、初版が出版された後の事で、新全集版ではその後の版から、新たに発見された第3楽章を巻末の付録として掲載し、真偽に疑問があることを注釈として書き加えるという処置を取っています。作品的には、かなりの力作で、初期のハイドンの諸作と比べて全く見劣りがしません。なお、1楽章の速度表示は無いのですが、アレグロ・モデラートが順当と考えます。


○第1番(第10番)ハ長調通し番号−10

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Allegro 小ソナタ
2 4/4 Andante バロックソナタ
3 3/4 Menuet メヌエット
トリオはフラット2つで書かれている
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
単純明解だが創作上の工夫もかなり見られる。
注釈

新全集版では、ここから9曲の作品を「小ソナタ」と分類しています。ソナチネアルバムでお馴染みの諸曲と、雰囲気的に非常に近い作品が並んでいます。おそらく弟子に弾かせる目的で作られた作品でしょう。クレメンティもベートーヴェンもソナタとソナチネを区別して作曲していますが、ハイドンの場合も、まだソナタ、ソナチネという呼称が定着していない時期だったということだけで、同様の区別があったと考えられます。


○第7番(第2番)ハ長調通し番号−11

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro moderato ソナチネ
ほとんど2部形式
2 3/4 Menuet メヌエット
トリオはフラット2つで書かれている。
3 3/8 Allegro ソナチネ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1766 3楽章が3小節単位のフレーズになっているのが目を引く。

○第8番(第1番)ト長調通し番号−12

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro ソナチネ
2 3/4 Menuet メヌエット
トリオ無し
3 4/4 Andante 単純な2部形式
4 3/8 Allegro 単純な3部形式
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1766 1つ1つの楽章が実にコンパクトにまとまっていて、子ども向けの小品のような感じ。

○第9番(第3番)ヘ長調通し番号−13

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro 小ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 2/4 Scherzo 単純な3部形式
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1766 3楽章の2拍子のスケルツォはこの当時の一つの様式。

○第10番(第6番)ハ長調通し番号−14

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Moderato 小ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
トリオはフラット2つで書かれている
3 2/4 Presto 小ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1767 小ソナタとしては比較的長めで、その分内容的にも充実している

○[G1](第4番)ト長調通し番号−15

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro 小ソナタ
2 3/4 Minuetto メヌエット
3 3/8 Presto 複合3部形式
中間部はフラット1つ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1楽章のソナタの形式が、かなりしっかりとしているのだが、旋律的には単純。
注釈

この曲は、旧全集版ではソナタには分類されていませんでした。完全な形の資料が無い事が最大の理由と思いますが、3楽章が含まれない資料がある事、3楽章が含まれる資料では、その楽章が次の第11番の第1楽章と同じ曲になっている事、弦楽器を含む形の資料も存在する事、等が重なり、この曲が真正のクラヴィア独奏のソナタと確定出来なかった、ということと考えられます。

しかし、この曲と次の第11番を比較した場合、楽章構成や全体のまとまりがこちらの方が圧倒的に優れている事は、だれの目にも明らかで、新全集版ではこちらを真作と決定しています。


×第11番(第5番)ト長調通し番号−16

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/8 Presto 複合3部形式
2 2/2 Andante 小ソナタ
3 3/4 Menuet メヌエット
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
1767 2楽章がかなり聞き応えがある。
注釈

この曲の問題は、一つ前の曲の注釈でも触れました。旧全集版でこちらが真正の作品として疑われていなかった最大の理由は、1767年のブライトコップフ社の出版目録にこの曲が掲載されていたからです。しかし、その出版がハイドンの承認による正規の出版であるとは到底考えられず、作品の信憑性の判断の材料にはならない事に、異を唱える学者はいません。

新全集版では前の[G1]の曲を真正の曲と判断し、この曲は単なる寄せ集めとして、第2楽章、第3楽章を、未完成もしくは消失した作品の1部と考え、楽譜も巻末の付録に掲載しています。しかし、ウィーン原典版では、双方に異なる番号を与えています。

こちらの曲が「寄せ集め」である事は間違いないでしょう。ただし、当時は代替楽章という考え方があり、この曲が全く不当なものであると即断するのは危険で、ウィーン原典版の処置も一理ある、という事になります。しかしながら、やはり新全集版の判断の方に軍配が上がるのではないでしょうか。なお、この曲の第3楽章のトリオに疑問を持つ学者がいる他は、前曲にもこの曲にも偽作説のある楽章はありません。私見ですが、この曲の第2楽章が、単独の作品である可能性もあると思います。


○[XVII:D1](第7番)ニ長調通し番号−17

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 [Andante] 変奏曲
2 3/4 Menuet メヌエット
トリオ無し
3 2/4 Finale [Presto] 小ソナタ
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
こじんまりしているが、それなりに楽しめる。
注釈

この曲も旧全集版では掲載されていません。以前は、ソナタではなく単独作品と考えられていました。1楽章が主題と3つの変奏からなっていますが、そのままでは変奏曲として全体的にちょっと中途半端なので、2楽章が第4変奏、3楽章が第5変奏と思われてしまった、という理由でしょう。2楽章がトリオの無いメヌエットですので、そう見えても不思議はありません。もちろん、2楽章、3楽章は厳格な変奏にはなっていないのですが、少し時代が下ったならばこの程度の自由な変奏はあり得ます。ハイドンの初期の時代ではあり得ない、とする時代考証的な判断が下せるようになったのは比較的最近のことと思います。

ただし、この作品はハイドン自身が変奏曲とソナタの様式を折衷して考えていた可能性が高いと思います。むしろ、後の進化した変奏曲の先駆者としての位置を与えた方が良いのかも知れません。


◎第3番(第14番)ハ長調通し番号−18

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/4 Allegretto バロックソナタ
2 2/4 Andante 小ソナタ
3 3/4 Menuet メヌエット
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
かなり起伏があり、規模も大きく、それなりに聞きどころがある。

◎第4番(第9番)ニ長調通し番号−19

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 [Moderato] 小ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
作曲年 出版年 区分 おすすめランク 特徴
練習曲的な音形が多く、面白味に欠ける。おそらく第3楽章が消失しているものと考えられる。