弦楽4重奏曲の部屋第2室

BGM/Haydn Strig Quartet No28(19) c-moll Op.17-4 1st mov.

第19番(第12番)ハ長調作品9−1

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato 中ソナタ
2 3/4 Menuet
Un poco Allegro
メヌエット
トリオの後半が、リピート無しで半終止のみ
3 6/8 Adagio 中ソナタ
単一主題のソナタに近い。後半リピート無し
4 2/4 Presto 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1770) 比較的ゆったりした感じの作品、3楽章のアリアを思わせる、美しく且つドラマチックな音楽が白眉。
注釈

この時代、作品9と17を通して目立つ特徴をいくつか挙げてみます。

  1. 第1楽章にモデラートが多用されていること。
  2. ファーストバイオリンが技術的にかなり高度であること、特に細かいパッセージや重音が目立ちます。また、時としてカデンツァ風の部分も登場します。
  3. フェルマータによる小休止が多用されていること。
  4. メヌエットが2楽章にきていること。
  5. 和声的な処理や音楽の構成において、独自の工夫が目立つこと。
  6. ソナタ形式の提示部は、以前よりも規模の拡大が認められること。
  7. その反面、再現部が縮小されていること。時として、第2主題の主要なフレーズの再現が省略されているケースがあります。
  8. それぞれの6曲の内、短調が1曲ずつ、緩徐楽章が短調の曲が1曲ずつ、6/8Prestoの1楽章を持つ曲が1曲ずつ、変奏曲を1楽章に持つ曲が1曲ずつ。という具合に、曲集全体の構造が非常に良く似ていること。

第20番(第14番)変ホ長調作品9−2

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato Es 中ソナタ
2 3/4 Menuet Es Es メヌエット
3 4/4
3/4
Adagio Cantabile Es リート形式
序奏付き、リピート無し
4 4/4 Allegro di molto Es 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1770) 3 全体的には堂々として、しかも起伏の多い作品。バロック風の展開もあり、ちょっと焦点が定まっていないとも言える。

第21番(第13番)ト長調作品9−3

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato 中ソナタ
2 3/4 Menuet Allegretto メヌエット
3 3/4 Largo バロックソナタ
リピート無し
4 2/4 Presto 中ソナタ
単一主題的
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1770) 3 この曲はかなり重厚な内容を備えていて聞きごたえがある。

第22番(第11番)ニ短調作品9−4

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato 中ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
トリオVn.のみ
3 2/2 Adagio
Cantabile
中ソナタ
リピートは無いが、提示部は変奏されて繰返している。
4 6/8 Presto 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1770) 3 この曲は比較的珍しい短調作品で、かなり感情的な起伏を持っている。2楽章のトリオは1stバイオリンに重音奏法を用いているが、かなり高度な演奏技術が要求される。
注釈

この曲が、作品9の6曲の中では最初に書かれた作品になります。初期の10曲が書かれてから、10年ほどの期間が経ってしまっていましたが、当時のハイドンは、必ずしも弦楽4重奏曲を作らなければならない状況ではなかったと判断出来ます。もちろん初期の弦楽4重奏曲が徐々に出版され、評判になり、次に期待が集まり始めたということはあるのですが、エステルハージ侯爵の楽団で、弦楽4重奏曲を演奏する必然性はあまり無かったと思われます。むしろ、ハイドン自身の中に弦楽4重奏曲を作曲したいという欲求が高まってきたのではないかと考えられます。そう考えてみますと、この曲の持つ情熱的とも感傷的とも思える感情の発露は、作曲家ハイドンの心の叫びを素直に表現しているのではないかという気がいたします。また、そういう作品を1曲目の曲順にせず、4曲目に持ってきているという一種の「照れ?」にも、何か微笑ましさを感じます。


第23番(第15番)変ロ長調作品9−5

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Poco Adagio 変奏曲
2 3/4 Menuet Allegretto メヌエット
3 3/4 Largo Candabile Es バロックソナタ
4 2/4 Presto 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1770) 3 ハイドンの変奏曲は佳曲揃いではあるが、この曲はその中でも際立った作品と言える。しかしながら全楽章通した印象は多少散漫。

第24番(第16番)イ長調作品9−6

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 6/8 Presto 中ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 2/2 Adagio 小ソナタ
4 2/4 Presto 3部形式
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1770) かなり緻密に書かれていて、なかなか楽しめる。4楽章が短かすぎるのが残念。

第25番(第18番)ホ長調作品17−1

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato 中ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 6/8 Adagio 中ソナタ
後半リピート無し
4 2/4 Presto 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1771 3 ソナタの楽章はどれも展開部・再現部がコンパクトに出来ていて、バロックソナタの雰囲気がある。

第26番(第17番)へ長調作品17−2

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Mederato 中ソナタ
2 3/4 Menuet Poco Allegretto メヌエット
トリオの後半リピート無し
3 2/2 Adagio 小ソナタ
4 2/4 Allegro di molto 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1771 3 多くのモチーフを積み重ねているような曲、なかなか佳曲と思うが、旋律が魅力的とは言えない

第27番(第21番)変ホ長調作品17−3

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Andante grazioso Es 変奏曲
2 3/4 Menuet Allegretto Es Es メヌエット
3 3/4 Adagio As Es バロックソナタ
4 4/4 Allegro di molto Es 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1771 1楽章は得意の変奏曲だが、もう一歩。3,4楽章のソナタはコンパクトであり、第2主題が、第1主題に近く、独立性が少ない。

第28番(第19番)ハ短調作品17−4

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato Es 中ソナタ
再現部の第2主題が前半省かれている
2 3/4 Menuet Allegretto メヌエット
3 3/4 Adagio Cantabile Es バロックソナタ
リピート無し、前半を変奏して繰り返している
4 2/2 Allegro Es 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1771 なかなか楽しめる作品。書法上の工夫が目立つ。4楽章の第2主題のバイオリンが非常に技巧的で驚かされる。

第29番(第22番)ト長調作品17−5

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato 中ソナタ
2 3/4 Menuet Allegretto メヌエット
トリオの後半リピート無し
3 3/4 Adagio リート風の2部形式
リピート無し
レシタティーヴォ風のフレーズが挿入される
4 2/4 Presto 中ソナタ
第2主題の前半の再現が省略されている
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1771 第3楽章のレシタティーヴォが最大の特徴となっている。旋律的にも楽しめる。

第30番(第20番)ニ長調作品17−6

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 6/8 Presto 中ソナタ
第2主題が短調になっている
2 3/4 Menuet メヌエット
3 4/4 Largo バロックソナタ
リピート無し
4 2/4 Allegro 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1771 ハッとさせられるフレーズが散りばめられていて、現代人の耳にも新鮮に感じられる。

第31番(第28番)変ホ長調作品20−1

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Allegro moderato Es 中ソナタ
2 3/4 Menuetto Un poco Allegretto Es As メヌエット
主部の後半はかなり拡大されている。トリオの調号はそのまま、後半はリピート無し。
3 3/8 Affettuoso e sostenuto As Es 中ソナタ
4 2/4 Presto Es 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1772 トリオソナタ的な部分があったり、対位法的な処理が目立ったり、バロック的な香りが強い。3楽章が美しい。
注釈

作品20の6曲は普通「太陽」4重奏曲と呼ばれています。この名称は、フンメル版の楽譜の表紙に太陽の絵が描かれていたという理由からで、曲の内容とは直接の関係はありません。

この曲集が、ハイドンの弦楽4重奏曲の分野での、最初の到達点であることに、疑いの余地は無いでしょう。最高傑作に推す人さえいるほどです。

この曲集だけの大きな特徴として、6曲中3曲の終楽章にフーガが採用されていることは、良く言われます。しかし、全体的に見るならば、その事よりもむしろ、次から次へとフレーズが流れるように登場する、ということこそが、他の作品よりも数段優れていると点と考えられます。それは、特にソナタの提示部で、第2主題がどれか特定できないほど、メロディアスなフレーズが次々と登場するという形になって現れてきます。ハイドン自身は、その点を反省し、形式的にがっちりした作風に移行していく訳ですが、ロマン派の音楽を経験している我々現代人にとっては、このロマン派的な部分にこそ大きな魅力を感じるのではないでしょうか。そう考えてみますと、フーガ楽章は却って邪魔であるという気さえするのですが、そう断言するのは言い過ぎでしょうか?


第32番(第25番)ハ長調作品20−2

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Moderato 中ソナタ
2 4/4 Adagio Es 自由な形式
リピート無し
劇的な雰囲気の前半とカンタービレの後半の対照が面白い。3楽章に切れ目なく続く。
3 3/4 Menuetto Allegretto メヌエット
トリオの後半リピート無し
4 6/8 Fuga a 4 soggetti フーガ形式
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1772 冒頭でチェロがメロディを奏でるのが目を引く。全体的な構成が特異な曲と言える。

第33番(第26番)ト短調作品20−3

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro con spirito 中ソナタ
2 3/4 Menuetto Allegretto Es メヌエット
3 3/4 Poco Adagio 中ソナタ
リピート無し
展開部と再現部が結合されている。
4 4/4 Allegro molto 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1772 印象的な部分の多い作品。余韻が残るように消えていく終わり方が素晴らしい。

第34番(第27番)ニ長調作品20−4

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/4 Allegro di molto 中ソナタ
2 2/4 Un poco Adagio affettuoso 変奏曲
3 3/4 Menuetto
allegretto alla zingarese
メヌエット
主部は4拍子のような変わった旋律。
4 4/4 Presto scherzando 中ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1772 おそらく6曲中最も優れた作品。全く隙の無い仕上がりと思う。2楽章の変奏曲が秀逸。

第35番(第23番)ヘ短調作品20−5

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Allegro moderato As 中ソナタ
2 3/4 Menuetto メヌエット
3 6/8 Adagio 中ソナタ、リピート無し
4 2/2 Fuga a 2 Soggetti フーガ形式
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1772 旋律や和音の美しい部分が目に付く作品。叙情的と表現すべきか?

第36番(第24番)イ長調作品20−6

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 6/8 Allegro di molto e Scherzando 中ソナタ
2 2/2 Adagio Cantabile 2部形式
譜面上はリピートなしだが、前半が変奏されて繰返す形になっている
3 3/4 Menuetto Allegretto メヌエット
4 4/4 Fuga a 3 Soggetti Allegro フーガ形式
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
1772 1,2楽章が素晴らしい。フーガ楽章はこの曲が一番優れていると思う。