Music of Statue / Akira Fukuda[MSQS 0002] 

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収録曲目

1.Music of Statue for Acoustic Piano [29'20"]
2.Music of Statue for Sampler Keyboard [26'08"]

解説

 この作品は、環境音楽と呼ぶのが近いシリーズの作品集です。かつて環境音楽の1分野として、「家具調の音楽」というものがありましたが、家具調の音楽は、本質的に音楽としての主張を極力廃するような傾向がありました。私は、そういう「家具調の音楽」の思想を思想としては理解したものの、同時に、自分では作れないタイプの音楽であるとも感じました。それでは自分に出来るものはどういうものかという所から端を発し、似たような傾向を持ちながら、音楽としての主張を備えた作品を考えたものです。「彫刻の音楽」というネーミングも、あちらが「家具」であるならば、こちらは「彫刻」であろうという意味を込めた造語です。
 作品自体は、計算された即興によるもので、1曲目は生のピアノを用い、2曲目はサンプラーを用いています。サンプラーは音色的にはエスニック系と呼ばれるものを多用しています。
 以下は音楽ライターの満津岡信育氏のご好意により、ライナーノートとして寄せてもらった文章の一部です。

 福田の場合、プログレッシヴ・ロックのコレクターとしても相当なものである、という認識が私にはあるのだが、こと《室内交響曲》や《クラリネットとピアノのためのソナタ》に関しては、そうしたプログレや8ビートの影響は皆無である。あるいは、彼が現代音楽の作曲家としてのみならず、バンド活動などをすることによって、結果的にガス抜きが計られてしまったのか、それともクラシック音楽とポピュラー音楽をはっきりと区別しているのかが、私にはもうひとつよく分からなかったのであるが、今回の当ディスクに収録されている《Music of Statue for Acoustic Piano》と《Music of Statue for Sampler Keyboard》を聴き、「ああ、なるほど」と少しそこら辺の事情が諒解できたような気になったことを付記しておいた方がよさそうだ。いずれも、あらかじめ録音した音源に、福田自身が即興でピアノもしくはキーボードを手弾きをして仕上げられたディスクには、実に多様な響きが収録されているのである。さまざまな音楽に通じている福田の場合、ピアノもしくはキーボードを操って、なんらかの手法に則って、手癖をそのままダイレクトにぶつけて音楽を紡ぐことは、とてもたやすかったに違いない。しかし、ここでは"沈思と饒舌"、"即興と熟慮"といったように、相反する要素が絶妙なバランスでつり合いながら、進んで行くのだ。ジャンルとしては、無理に分ければ、「環境音楽」になるのかもしれないが、どうしてなかなか既製のジャンル分けを拒むかのような音楽になっていることは、当ディスクを聴いていただいた方には、一耳瞭然であろう。