弦楽4重奏曲の部屋第1室

BGM/Haydn String Quartet No.6 C-Dur Op.1-6 3rd mov.

第0番(第5番)変ホ長調作品1−0

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Presto Es 小ソナタ
2 3/4 Menuet Es メヌエット
トリオをフラット2つで書いている
3 2/2 Adagio 小ソナタ
4 3/4 Menuet Es Es メヌエット
5 2/4 Presto Es 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1757) バイオリンの重音奏法が目に付く。
2楽章のトリオが、作品2−2、作品2−5の2楽章のトリオと共通性があるのは興味深い。
注釈

ハイドンの弦楽4重奏曲を初めて全集として出版したのは、ハイドン生前の1801年より刊行されたプレイエル版で、その時の番号が現在も使われています。それ以前は、いろいろな出版社から出版されていますが、作品番号や曲順が異なる程度ならまだしも、偽作が紛れ込んでいたり、ひどいものになると全部偽作であるというケースすらあります。プレイエル版自体が、そういう混乱をきたしてしまっている面があって、作品1につきましては、本来は弦楽4重奏曲ではない曲が1曲紛れ込んでいて、真正の曲を1曲外してしまっています。その間違えて外された作品は、20世紀になってから判明し(他のジャンルに分類されていました)、作品1−0すなわち第0番と呼ばれることとなりました。


第1番(第1番)変ロ長調作品1−1「狩猟」

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 6/8 Presto 小ソナタ
2 3/4 Minuet Es メヌエット
3 4/4 Adagio Es 2部形式
4 3/4 Minuet メヌエット
5 2/4 Presto 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1757) 非常にまとまりは良いが、分散和音的な旋律が目立ち、古臭さはぬぐえない。3楽章は美しい。4,5楽章は楽しめる
注釈

曲調から考えまして、この曲が記念すべき第1作ということで間違いないでしょう。弦楽4重奏曲は、ハイドンが、フュールンベルク男爵という音楽好きの貴族の私的演奏会に招かれたときに、集まった4人の弦楽器奏者で演奏出来る曲を書くように勧められたのが、きっかけと考えられています。しかし、作品1,2全曲に言えることなのですが、コントラバスを加えて演奏することも可能なように書かれています。


第2番(第2番)変ホ長調作品1−2

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/8 Allegro molto Es 小ソナタ
2 3/4 Minuet Es メヌエット
3 4/4 Adagio 小ソナタ
4 3/4 Minuet Es メヌエット
トリオはフラット2つで記譜されている
5 2/4 Presto Es b,B 小ソナタ
第2主題が短調になっている
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1757) 全曲的に流れるようなメロディが印象に残る。第1番よりも音楽的内容が深いと思う。

第3番(第3番)ニ長調作品1−3

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/4 Adagio 小ソナタ
トリオソナタ風
2 3/4 Menuet メヌエット
3 2/4 Presto 複合3部形式
4 3/4 Menuet メヌエット
5 3/8 Presto 複合3部形式
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1757) 一楽章がアダージョになっていて、書法的にはトリオソナタ風になっている。2楽章でバイオリンに左手のピチカートが登場するし、短調の部分が目立つなどテクニック的にも、書法的にもより高度になっているのが目に付く。

第4番(第4番)ト長調作品1−4

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/8 Presto 小ソナタ
2 3/4 Minuet メヌエット
3 4/4 Adagio 小ソナタ
4 3/4 Minuet メヌエット
5 2/4 Presto 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1757) 作品1の中ではおそらく最も優れた作品と思われる。各所にはっとさせられる部分がある。

第5番(編作)変ロ長調作品1−5

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/4 Allegro 小ソナタ
2 2/4 Andante Es 小ソナタ
3 6/8 Allegro molto 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1761) この曲は交響曲"A"(第107番)が管楽器のパートを省かれて紛れ込んだもの。原曲は初期の曲としては佳作と思うが、こちらは管が無いぶんだけ曲としては劣って見える。

第6番(第6番)ハ長調作品1−6

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 6/8 Presto Assai 小ソナタ
2 3/4 Minuet メヌエット
3 2/4 Adagio バロックソナタ
4 3/4 Minuet メヌエット
トリオがフラット2つで書かれている
5 2/4 Allegreo 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1757) 書法的には多少単調な面があるが、アダージョの美しさは特筆もの。

第7番(第7番)イ長調作品2−1

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro 小ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 2/4 Adagio バロックソナタ
4 3/4 Menuet メヌエット
5 2/4 Allegro molto 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1760) 和声的な処理に一段と進歩が見え、魅力的な旋律を備えている。

第8番(第8番)ホ長調作品2−2

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro molto 小ソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 4/4 Adagio 小ソナタ
4 3/4 Menuet メヌエット
5 2/4 Presto 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1760) この調は比較的珍しい。旋律的な魅力も目に付くが、演奏技術的に高度な曲になっている。

第9番(編作)変ホ長調作品2−3

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Allegro molto Es 小ソナタ
2 3/4 Menuetto Es Es メヌエット
3 4/4 Adagio 小ソナタ
4 3/4 Menuetto Es Es メヌエット
トリオの後、変奏が3つ続き、その後メヌエットにダ・カーポするという変わった構成を持つ
5 2/4 Allegro Es 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1760) ちょっと単調な感じがある。コントラバスが入っていないとおかしいと思われる部分がある。第4楽章の構成は他に類を見ない。
注釈

作品2の3と5の2曲は、元来はホルン2本を加えた6声部のディベルティメントとして書かれた作品です。当然バス声部は通奏低音として、チェロだけではなくコントラバスやファゴット等が加わるのが順当でしょう。しかし、この2曲は他の4曲とスタイル的に全く違和感が感じられなく、もともと弦楽4重奏曲としても演奏できるように考えられていて、作品2の曲集に加えられるように、当初から意図されていたのではないか、という疑いがあります。詳しくは、別室の小論文をご覧下さい。


第10番(第9番)ヘ長調作品2−4

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 6/8 Presto バロックソナタ
2 3/4 Menuet メヌエット
3 3/4 Adagio As 小ソナタ
4 3/4 Menuet Allegretto メヌエット
5 2/4 Allegro 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1760) なかなか、聞きどころの多い作品。第3楽章が、初期では唯一の短調の楽章で、切々と胸にせまる音楽となっている。他の楽章でも部分的に短調になっている所があり、長調の明るさとの対比が際立っていて、聴く者を飽きさせない。

第11番(編作)ニ長調作品2−5

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/8 Presto バロックソナタ
2 3/4 Menuetto メヌエット
トリオは調号無しで書かれている
3 2/2 Largo cantabile alla breve 小ソナタ
4 3/4 Menuetto メヌエット
5 2/4 Presto 3部形式
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1760) 作品2−3と同じく元来はホルン2を加えたディベルティメント。かなり強弱のめりはりが効いた作品。2楽章のトリオが、作品2−2の2楽章のトリオと同じフレーズを用いているのが興味深い。

第12番(第10番)変ロ長調作品2−6

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Adagio 変奏曲
2 3/4 Menuet Es メヌエット
3 2/4 Scherzo Presto Es As 複合3部形式
4 3/4 Menuet メヌエット
5 3/8 Presto 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1760) 初期の作品の中では際立った力作。1楽章のアダージョの変奏曲が最大の聞きもの。
注釈

この曲の第3楽章では、4分の2拍子の音楽に、スケルツォと書かれているのが興味を引きます。実は作品1−3の、第3楽章も同じような曲調なので、表記はありませんが同じくスケルツォと考えられます。スケルツォはもともと諧謔的な小品のことを意味し、必ずしも3拍子とは限らないのですが、ハイドンの作品33の通称「ロシア4重奏曲」(メヌエットの替わりにスケルツォを採用したことで有名です)では、全曲3拍子のスケルツォ(スケルツァンドの表記もありますが)になっていますし、この曲のような2拍子の実例は珍しいと思います。形式的には、ダ・カーポを用いた複合3部形式になっています。


第13番(偽作)ホ長調作品3−1

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 4/4 Allegro molto 中ソナタ
2 3/4 Menuetto メヌエット
3 6/8 Andantino grazioso バロックソナタ
4 2/4 Presto 単純な3部形式
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1777) × まとまりはあるが、面白味は感じない。
注釈

作品3の6曲はハイドンの作品ではありません。この曲集は1777年にパリのベユー社より初めて出版されたものですが、その原版を調査したところ、ホフシュテッターという別な作曲家の名前を消した跡が見つかりました。ロマン・ホフシュテッターという人物は、当時の僧職の作曲家で、必ずしもプロとは呼べないのですが、いくつか作品を発表している記録が残っています。この曲集は、前述のプレイエル版と呼ばれるハイドンの弦楽4重奏曲全集に載ってしまったため、長くハイドン作と誤認されていました。曲調的には、1770年代のハイドンの作品の特徴を備えていますが、70年代の作品と比べれば内容的に劣っているのは明白です。しかしそのために、かえって初期から中期に移行する時期の実験作とも見えてしまいます。詳しくは、別室の小論文をご覧下さい。


第14番(偽作)ハ長調作品3−2

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 2/4 Fantasia con Variazioni Andante 変奏曲
バス・オスティナート
2 3/4 Menuetto メヌエット
3 2/4 Presto 複合三部形式だが主部はソナタ形式となっている
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1777) × 1楽章は旋律的に楽しめる。3楽章は構想が面白いのだが、冗長に感じる。

第15番(偽作)ト長調作品3−3

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 6/8 Presto 小ソナタ
2 3/4 Largo 小ソナタ
3 3/4 Menuetto メヌエット
4 2/4 Presto 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1777) × 曲想的に考えて、弦楽4重奏よりも弦楽オーケストラの作品と思える。しかし、曲調的にはけっこう楽しめる

第16番(偽作)変ロ長調作品3−4

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/4 Allegro moderato 中ソナタ
2 4/4
3/4
Adagio
Presto
Es 序奏付き小ソナタ
序奏が展開部で再登場する
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1777) × 番外 完成作とは認められないし、2楽章の序奏が展開部に再登場する構成以外には、全く面白味がない

第17番(偽作)ヘ長調作品3−5「セレナード」

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/8 Presto 中ソナタ
2 4/4 Andante cantabile バロックソナタ
3 3/4 Menuettp メヌエット
4 2/4 Scherzando 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1777) × 2楽章「セレナード」が有名ということで、おすすめはAランクにしているが、実際はCくらいと考えられる。

第18番(偽作)イ長調作品3−6

楽章 拍子 速度記号 調性1 調性2 形式
1 3/4 Presto 中ソナタ
2 4/4 Adagio 小ソナタ
3 3/4 Menuetto メヌエット
4 2/4 Scherzando 小ソナタ
作曲年 区分 おすすめランク 特徴
(1777) × 作品3の6曲の中では一番優れた作品。2楽章の協奏曲風の書法が目に付く。3楽章は秀逸。